みなさんこんにちは。
「産後の肥立(ひだ)ち」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
「産後は無理をして動いてはいけない、ゆっくり休まなくてはいけない」と言われ、家事育児をしようとして周囲から止められたことがある方もいると思います。
元気もあるし動けるのにこのように言われるのには「産後の肥立ち」が関係しています。
産後の肥立ちが悪い、産後の肥立ちが良い、という言い方をされますが、産後の肥立ちが悪いことから死に至るケースもあるのです。
今日はそんな「産後の肥立ち」を甘く見ると後々怖いことに…というお話をしたいと思います。
産後の肥立ちとは?
「肥立(ひだ)ち」という言葉には、
- 日を追って成育すること。
- 日を追って病気や体の調子がよくなること。
というふたつの意味があります。
「産後の肥立ち」に関して言うと、後者の意味が適合します。
出産を終えた母体が自然と妊娠前の状態に戻ろうとすることを「産後の肥立ち」と言います。
よく耳にする言葉なのですが、調査によると実際に「産後の肥立ち」の意味を知っているママは42パーセントと意外に少なく、聞いたことはあるが意味は知らないというママは58パーセントにも上ったのだそう。確かになんだか昔の言葉?ことわざ?みたいな印象を受けますよね。
母体が妊娠前の状態に戻る「産後の肥立ち」の期間は、別名「産褥期(さんじょくき)」と呼ばれています。たいだい産後6~8週間くらいにあたり、この時期はママの身体を休める為、できるだけ安静に過ごすよう推奨されています。
もしかしたら「産後の肥立ち」という言葉は知らなかったけれど「産褥期」のことは知っている、というママもいるのではないでしょうか。
「産後の肥立ちが悪い」とは?
「産後の肥立ちが悪い」とは、母体が妊娠前の状態にうまく戻ることができずにいること。ママの身体に何らかのトラブルが生じている可能性が考えられます。
具体的にどういった症状が出るのかについては後ほど説明していきます。
産後の肥立ちが悪い原因は、「産褥期」の過ごし方が大きく関係しています。産褥期に無理をするとやがて訪れる更年期の健康状態を悪化させる可能性があり、ただの一時的な体調不良では済まされなくなります。(これについても後述します)
昔は出産後の母体の栄養状態があまり良くなかったことから、なかなか体力が回復せず「産後の肥立ちが悪い」という状況は珍しくなかったようです。免疫力が落ちた状態で感染症にかかり、現在ほど医学も進歩していなかったため死に至るケースもあったのだそう。
「産後の肥立ち」はいつまで?
「産後の肥立ち」はママの身体が回復する産後6~8週間くらい、「産褥期」といわれる期間が終わるまで続きます。
ママの1ヶ月健診で問題がなければ、医師から「通常の生活に戻って良い」と言われると思いますので、ひとつの目安にすると良いでしょう。特に会陰切開や帝王切開の傷が治癒したかどうかは、自己判断しない方が無難です。
ちなみに、ママが普通の生活に戻ることを「床上げ(とこあげ)」と言います。
産褥期の「産褥」は、出産で妊婦が使う布団のことを指すのだそう。自宅出産が多かった昔は「床上げまで21日」と言われていて、21日間は布団を敷きっぱなしにして養生しながら生活をしていました。「産褥期」という言葉はここから来たもの。21日後から布団を上げて普通の生活に戻ったことから「床上げ」といわれていたのだそうです。
スポンサーリンク産後の肥立ちが悪いとどんな症状が出る?
症状【1】産褥熱
分娩後24時間以降~産後10日以内の間に、38度以上の熱が2日間以上出続けるのが「産褥熱(さんじょくねつ)」。
産褥熱は出産を終えた母親が死に至る最も重大な原因でした。昔は自宅出産が多かったため、出産時の衛生環境が良くなかったようです。そのため産道や子宮内の傷から細菌に感染して産褥熱を引き起こすというケースが多かったのだそう。医学が進歩した現在は、抗生物質の普及や感染そのものが減ったことから死亡率は低下しています。
細菌感染以外に産褥熱が出る原因は他にもあります。
- 悪露の出方が悪い
- 胎盤が子宮内に残っている
これらについては、出産後の内診で医師がチェックしているので普通は問題ないと思います。
死に至るケースは少ないと言えど、高熱が出た場合はすみやかに病院で診察を受けるようにしましょう。
症状【2】子宮復古不全
出産を終えた子宮は1ヶ月くらいかけて元の大きさに戻っていきます。しかし、何らかの原因によって子宮の収縮が悪くなかなか元の大きさに戻らない状態が「子宮復古不全」です。
その原因は様々です。
- 胎盤の一部が子宮内に残っている
- 子宮の収縮を促すホルモン「オキシトシン」が十分に分泌されない
- 巨大児、多胎妊娠
- 羊水過多
産後1ヶ月過ぎても悪露の量が減らない、悪露が出続けている、レバーのような塊が出る場合は子宮復古不全の疑いがあります。子宮復古不全は感染症を併発しやすく、産褥熱が続いたり子宮に痛みが出ることもあります。
症状【3】骨盤のゆるみ
出産で開いた骨盤は、産後約3ヶ月~半年かけて自然と元に戻ります。産褥期に無理に動いて骨盤に負担がかかると、正常な状態に戻らない可能性があります。
- 尿漏れ
- 血流の悪化
- ホルモンバランスの乱れ
- めまい
- 冷え
- 恥骨痛
- 腰痛
このように骨盤のゆがみから引き起こされる症状は様々です。
また、骨盤内で臓器を支えている骨盤底筋群が傷ついたり緩むことで、「骨盤臓器脱(子宮脱)」を起こすことがあります。膀胱や子宮、直腸が膣から出てきてしまうという症状です。
症状【4】切れ痔やいぼ痔
産後ママの深刻な悩みのひとつに「便秘」というものがあります。特に出産直後は会陰切開した傷が気になって「いきめない」という理由から便秘になるママが多いのです。
便秘が悪化すると便が固くなって無理にいきんだりすることで切れ痔になってしまいます。肛門周辺の血管がうっ血して起こるいぼ痔は、いきむことによって外に出てしまうことも。切れ痔の傷から細菌に感染してしまう恐れもあるので、清潔にすることを心がけましょう。
痔の症状が出たとしても、恥ずかしくてなかなか病院にかかることができないかもしれません。しかし、痔も悪化すると手術が必要になる場合がありますので注意が必要です。
妊娠前は便秘と無縁だったママも、産後は便秘になる可能性は高まります。妊娠中から何かしらの便秘対策をしておくことが大切です。
症状【5】産後うつ
産後のママがかかる一過性のうつ症状を「産後うつ」といいいます。産後うつは様々な原因が重なって発症するといわれています。
- 産後の急激なホルモンバランスの変化
- 慣れない育児や家事
- 育児へのプレッシャーや不安
- 授乳や夜泣きによる生活リズムの崩れ
- 睡眠不足
- 精神的・肉体的疲労
真面目に頑張りすぎてしまうママが発症しやすいそうで、自分ではなかなか気づくことができないまま症状が悪化し、「死にたい」と思うほど追い詰められてしまうことも珍しくありません。
常にイライラしている、突然悲しくなる、物忘れが多い、眠れない、いつも疲れている、食欲がない、といった症状が現れますが、身近な身内に打ち明けてもあまり理解が得られないことも多いそう。そういった場合は、産婦人科や診療内科などを受診することを検討しましょう。
産後うつは長いと数ヶ月間続くことも。自分一人で抱え込まずに周囲に相談する、周囲の手を借りることが産後うつを回避するコツでもあります。
スポンサーリンク更年期障害の悪化につながる
産後の身体の状態は人それぞれで、中には「産後の肥立が悪い」とは無縁のママもいらっしゃいます。出産直後からバリバリ家事をこなし、上の子を連れて外出もへっちゃら、という方も。
意外に動けるからと産褥期に無理をすると、更年期になってから健康に影響が出る可能性があります。
40代半ば~50代にかけて発症する更年期障害は、ホルモンバランスの乱れが原因で起こります。身体がほてる、汗が異常に出る、倦怠感などの身体的不調や、落ち込んだり不安になったりと精神的不調が現れます。
若い頃に無理なダイエットや不規則な生活をしていたことによりホルモンバランスが乱れ、それが更年期障害を悪化させる原因のひとつであると考えられています。今は良くても後々無理をしたツケがまわってくるのです。
産後の肥立ちを良くする方法は?
産後の肥立ちを良くする方法【1】無理をしないでとにかく休む!
産褥期は基本的に安静にしていることが、産後の肥立ちを良くするいちばんの方法です。家事は極力しないように、授乳や赤ちゃんのお世話にとどめ、なるべく横になって過ごすようにしましょう。
二人目出産後は何かと動かなくてはなりませんが、子供のお昼寝時間は一緒に寝るなど睡眠時間を出来るだけ確保することが大切です。頼れる身内がいる場合は思いっきり甘えましょう。産後のお手伝いをしてもらえる民間のサービスを利用するという方法もあります。
産後の肥立ちを良くする方法【2】入浴は控える
免疫力が低下している産後は、細菌などに感染しやすい状態です。病院でも言われると思いますが、悪露が続いている間は湯船に浸かることはできません。シャワーで傷周辺の清潔を保つようにしましょう。
だいたい産後の1ヶ月健診で入浴(湯船に浸かっても良いか)の許可が出ると思いますので、ゆっくり入浴したいという気持ちがあると思いますが、それまではシャワーで我慢しましょう。
産後の肥立ちを良くする方法【3】骨盤をケア
産後の骨盤はまだグラグラした状態。無理して動くと骨盤が正常な位置に戻る妨げとなります。
授乳の姿勢にも注意が必要です。脚を組んだり横座りは避けましょう。上の子を抱っこしたり、重い荷物を持つなども骨盤の状態が悪化する原因となりますので控えるようにしましょう。
産後の肥立ちを良くする方法【4】激しい産後ダイエットは禁物
芸能人が産後あっという間に元のスタイルに戻るのを見て、自分も!と思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、産後すぐ自己流のダイエットを行うことは危険です。芸能人はパーソナルトレーナーなど専門家がついてダイエットをしています。無理なダイエットは子宮復古が遅れたり、骨盤が正常に戻らないままの可能性も。
産後当日から開始できる産褥体操を取り入れましょう。母体の回復を促す効果があり、骨盤ケアの一環にもなります。産褥期後に始める産後ダイエットにスムーズに移行することができます。
産後の肥立ちを良くする方法【5】バランスのよい食生活
産後の体力や免疫力を回復するために、食事はバランスよく食べることが大切です。特に授乳中のママは良いおっぱいを出すのにバランスの良い食事が大切。産後ダイエットの成功にも関わってきます。
産後6ヶ月は痩せやすいと言われていますが、出産直後から焦る必要はありません。産後ダイエットはまず母体の回復が最優先。授乳中の食事制限は母乳ダイエットの成功率を落とす可能性があります。母乳に良いといわれる和食中心のメニューがおすすめです。
産後の肥立ちを良くする方法【6】体を冷やさない
産後でなくても身体が冷えると血流が悪化して怠くなることがありますよね。また、身体の冷えはおっぱいの出を悪くする原因にもなります。
実は寒い冬より暑い夏こそ冷えには注意が必要です。エアコンの効いた部屋で冷たい飲み物を飲んだり、靴下も履かずに服は露出多め…などついついやってしまいがちですが、冷えまっしぐらです。
エアコンの設定温度は低くし過ぎないこと、暑いからと冷たい飲み物ばかり飲まないようにしましょう。
母乳はハーブティーなど温かい飲み物を飲むとたくさん出るようになるのでオススメ。
産後の肥立ちを良くする方法【7】目を酷使しない
「産後100日針持つな 妊婦の針仕事は血の道」という言葉があるのだそうです。
産後は母乳を作るのに栄養を取られるので視力が一時的に低下する。その時に目と神経を使う仕事をすると回復が遅れその後の体にも大変影響がある。
産前に産着を縫ったりしておいて、死産などすると産着を見て悲しみが増すからやめとけ。出典:横山路漫の切り絵教室
お医者さんがこのように解釈しているそうです。
眼精疲労から気分が悪くなったり肩が凝ったり、めまいなどの体調不良になることは知られていますが、目を酷使すると血液循環が悪くなるため子宮の回復にも影響すると考えられます。
「針」を現代版に置き換えると「パソコン」や「スマホ」に該当するのではないでしょうか。スマホを触らない日なんて考えられないかもしれませんが、使用はほどほどにしましょう。
産後の肥立ちを良くする方法【8】ストレスをためない
慣れない育児に家事が加わり、産後はこれまでの生活が一変します。上の子がいる場合は育児の負担は2倍に。ストレスも2倍以上になることが予想されます。
ストレスを溜めないことが大切ですが、ストレスの発散方法をいくつか用意しておくことが重要です。何でもひとりで抱え込まず周囲を頼る、ママ友と出掛ける、託児サービスを利用するなど、自分が少しでも楽になれる方法を見つけておきましょう。
産後はやはり里帰りすることが産後の肥立を良くするいちばん良い方法だと思いますが、里帰りがストレスになるというパターンもありますよね。親の手助けの代わりになるサービスが民間にあります。買い物はネットスーパーの宅配、家事は産後ヘルパーを利用、短時間の託児サービス、多少お金はかかってしまいますが利用できるものは何でも利用すべきです。
先程「産後うつ」のところで述べましたが、なんでも自分でやろうとする真面目で完璧主義のママほどストレスを溜めやすく産後うつになる可能性が高いそうです。「程よく適当」が丁度いいのかもしれません。
まとめ
産後の肥立ちが悪いのは、産後の過ごし方が大きく関係しています。
ママはとにかく休むこと!これがいちばんのポイントです。そうはいっても…という方もいらっしゃると思います。そんな場合は何かしらの逃げ道を作っておくようにしましょう。
産後うつは自分では気付かないうちに重症化してしまうこともあります。一人で悩まずに周囲の人を頼りましょう。家族がダメならママ友に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になりますよ。
今思えば周囲に愚痴ばかり言っていた気が・・(反省)